石野純也の「スマホとお金」
「Pixel 9a」がauとソフトバンクで“実質価格”が格安!? その仕組みとPixel 9との価格差をチェック
2025年4月17日 00:00
廉価モデルとして人気の高いPixel Aシリーズの最新モデル「Pixel 9a」が、ついに発売されました。
前回、本連載で取り上げたように、グーグルは円安ドル高の為替相場を反映させ、徐々にPixel Aシリーズの価格を上げてきています。Pixel 9aは、7万9900円と8万円に迫る金額になりました。コストパフォーマンスは依然として高いものの、以前に比べて手を出しにくくなったのも事実です。
一方で、これはあくまでグーグル直販価格の話。「Pixel 9a」はNTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアがメインブランドでの販売を表明しており、発売前から一部で実質価格が値下げされるなど、販売合戦の火花をバチバチと散らしています。その反面、機種変では割高になるなど落とし穴も。そんなキャリアのPixel 9aを巡る状況を分析しました。
直販並みの本体価格でキャリア購入のデメリットが少ない、MNPで大幅安も
キャリア販売のスマホは、一般的にSIMフリー(オープンマーケット)モデルより割高になる傾向がありますが、ことPixel 9aに関しては、そこまで大きな違いがありません。むしろ、ざっくり言えば グーグル直販とほぼ同額 と言っていいでしょう。128GB版の本体価格はドコモが7万9860円、auが8万円、ソフトバンクが7万9920円になります。
グーグルから買ってもキャリアから買っても同じで、SIMロックもかかっておらず、仕様には差がありません。そのため、端末購入プログラムを使用する、しないに関わらず、 キャリアで購入しても損はない 格好です。その意味では、オープンマーケットモデルに価格が上乗せされるキャリアのスマホよりも買いやすいと言えるかもしれません。
とは言え、これだとキャリアから買ってもあまり大きなメリットはありません。そのため、各社とも2年後の返却で残価を値引く(ソフトバンクは24回ぶんの分割支払金)端末購入プログラムを用意しています。これを活用することで、2年間、ほとんど端末代を支払わずに利用することが可能に。中でも アグレッシブなのが、auとソフトバンク です。
まずauですが、こちらは「スマホトクするプログラム」で 2年1200円 という実質価格を打ち出してきました。1カ月あたりの支払額は、わずか52円。お金がかかることは間違いありませんが、“ほぼ無料”と言っていい金額です。スマホトクするプログラムで免除される残価は、3万9200円になります。そのため、本体価格から単純に残価を引くだけだと、4万800円の負担が残る計算ですが、割引を適用することでさらに価格を下げています。
この割引は、総額で3万9600円にもなります。ガイドラインで定められている割引の上限は4万4000円。この“枠”をほぼ使い切った形で、発売初日から勢いをつけていることがうかがえます。ただし、ここまで割引が出るのは他社から乗り換えたときだけ。機種変更になると割引額は1万6500円まで下がり、実質価格は2万4300円になります。
注意したいのは、純粋な新規契約 の場合。この際には割引額が1万1000円まで落ち、実質価格も2万9800円まで上がってしまいます。既存のauユーザーが機種変するよりも高くなるというわけです。新規契約でPixel 9aの割引を最大まで受けたいときには、MNPが必須になると言えるでしょう。
また、 割引には料金プランの制限 もあります。具体的には、新規やMNPの場合、低容量の「スマホミニプラン+」や「スマホミニプラン」が割引の対象外になります。機種変更時の1万6500円については、「auマネ活プラン+」が必要。「故障紛失サポート ワイド with Cloud」も条件になっています。auマネ活プラン+以外の場合は、「5G機種変更おトク割」だけが適用され、その額は5500円まで下がります。最上位の料金プランとのセット割引であることは、認識しておいた方がいいかもしれません。
実質2400円を打ち出したソフトバンク、ただし機種変は高め
新規契約ではなく、MNPの割引額を増やしているのは、ソフトバンクも同じです。ソフトバンクは、「新トクするサポート(スタンダード)」で、25カ月目に下取りに出した場合の実質価格を当初3000円としていましたが、その後、 2400円へと“値下げ” しました。ソフトバンクの場合、48分割中、24回分が免除される仕組みですが、前半24回と後半24回の支払額に差をつけることで、残価設定型に近い仕組みを実現しています。
「Pixel 9a」の場合、 前半24回を100円 に設定。すべて支払っても2400円にしかならない形です。これも、新規契約MNPで他社から移ってきたときの価格。auとは異なり、割引を適用したあとから分割にするわけではなく、分割払いの金額そのものを変えることで、MNPや新規契約、機種変更の差を作っています。
機種変更になると、1回目~24回目の支払額が2000円にまで上がり、トータルの支払額は4万8000円になります。25回目から48回目の後半24回の方が、1330円と支払いが“軽くなる”逆転現象も。そのため、免除される支払額は3万1920円と小さくなります。ソフトバンクの新トクするサポートで免除する金額は、端末の残価に割引も加えたものになる点には注意が必要。逆に、MNPや新規契約には見えづらい割引を盛っているとも言えるでしょう。
また、4万8000円という実質価格は、auの機種変更よりも割高。その意味では、既存ユーザーにあまり優しくない価格設定と言えるかもしれません。一方で、 MNPだけでなく純粋な新規契約でも割安な価格でPixel 9aを購入できるのが、ソフトバンクの魅力 。その意味では、au以上に新規獲得に重きを置いていると言えます。ここからは、2社がPixel 9aに求める役割の違いも見て取れます。
インパクトに欠けるドコモ
対するドコモは、auやソフトバンクと比べると実質価格がやや高め。MNPでは「5G WELCOME割」が適用され、1万1000円安くなるものの、「いつでもカエドキプログラム」を使ったときの実質価格は2万9260円にしかなりません。ほぼ無料に近いauやソフトバンクと比べると、インパクトが欠けている印象も受けます。
ドコモは一時Pixelシリーズの取り扱いを取りやめており、その後再開した経緯もあり、他社とは温度差を感じるところも。こうした点が、MNPや新規契約での実質価格に現れているのかもしれません。なお、5G WELCOM割が適用されない新規契約や機種変更だと、実質価格は1万1000円高い4万260円になります。 機種変更に関しては、ソフトバンクより安くなる ことも付け加えておきます。
ライバルはPixel 9? ソフトバンクでは価格の逆転現象も
auやソフトバンクでは、無料に近いところまで実質価格が抑えられたPixel 9aですが、端末購入プログラムを使った際の実質価格では、“強力なライバル”も存在します。上位モデルの「Pixel 9」です。
「Pixel 9」は、本体価格がグーグル直販で12万8900円となっており、Pixel 9aよりも4万9000円高くなっています。一方で、端末購入プログラムを使うと、ソフトバンクではその差が埋まってきます。
ドコモはオンラインショップでPixel 9が在庫切れ、auは128GB版の実質価格がMNPで4万4000円、新規で5万5000円、機種変更で6万500円に設定しています。いずれのパターンでも、Pixel 9aより高めで、端末のグレードに見合った価格設定と言えるかもしれません。これに対し、 ソフトバンクはMNP、新規契約、機種変更のいずれも実質価格が2万4960円 にしており、契約形態での差がありません。
特に 注目したいのが機種変更 の場合。Pixel 9aは4万8000円だった一方で、上位モデルであるはずのPixel 9が2万4960円に設定されているのです。Pixel 9とPixel 9aは、チップセットを共通化しており、同じ「Tensor G4」を搭載。基本的な処理能力の差はありません。
一方で、メモリ(RAM)の容量や、カメラのセンサーなどには違いも。ディスプレイのベゼルの細さなども、Pixel 9の優位性。価格と性能のバランスだけなら、ソフトバンクの既存ユーザーがあえてPixel 9aを選ぶ理由が少なくなっていると言えます。また、 他社のユーザーも割引がつかないPixel 9aに機種変更するより、ソフトバンクに移ってPixel 9を買った方がいい のでは……という考えが頭をよぎるはずです。
Pixel 9は頻繁に価格改定されており、発売時には「新トクするサポート(プレミアム)」で、月額3円の価格がつけられていました。これに対抗したauも、2万円台の実質価格でPixel 9を販売してきた経緯があります。
昨年12月のガイドライン改正を受け、実質価格は値上がりしたものの、過去にこうした価格を見ていると、どうしてもPixel 9aが割高に思えてしまうのも事実。上位モデルと廉価モデルの差をつけつつも、きちんと両方を売っていくのがキャリアにとっての課題と言えるかもしれません。