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LTE周波数のNR化と大手キャリア4社の普及状況

 総務省によれば、2023年度末に5G人口カバー率が98.1%(2022年度末96.6%)に達したという。これらのカバー率達成に貢献しているのがLTE周波数のNR化であり、転用5Gとも呼ばれている。今回は、キャリア各社のLTE周波数のNR化について取り上げていきたい。

LTE周波数のNR化、キャリア間で進捗に開きが

 すでに大手キャリアはLTE周波数のNR化を導入しており、ソフトバンクは2022年3月末に、KDDI(au)も2023年3月末に5G人口カバー率90%を達成した。NTTドコモは2024年3月までに5G人口カバー率90%以上を目標としていたが、現在のところ、リリースは発表されていない。

 そうした中、KDDI(au)が2025年4月から、スマートフォンの画面上にて、「5G+」のアンテナピクトを開始した。5G+というアンテナピクトはユーザが5G(sub6/ミリ波)向けに割り当てられた周波数帯で通信していることを表している。

 従来の「5G」のアンテナピクトは5G(sub6/ミリ波)での待受時やLTE周波数のNR化(転用5G)での通信中/待受時となる。業界最多となる3万9000局のsub6基地局数を展開しているKDDI(au)ならではの「攻め」といえるが、5G専用基地局が最も少ないソフトバンクにとって、5G+のアンテナピクト導入は向かい風となりそうだ。

 楽天モバイルは2025年3月からLTE周波数のNR化を開始している。2027年度に2万9798局の基地局でLTE周波数のNR化を計画しており、LTE周波数のNR化に消極的なNTTドコモが5G人口カバー率において、他キャリアに引き離される可能性もある。

 また、楽天モバイルは後発参入であるため、4G専用端末ユーザが少ないものとみられ、LTE周波数の完全NR化も他キャリアに比べてハードルが低い。近い将来、楽天モバイルが国内で唯一の5G専用キャリアになるかもしれない。

 ただ、5G専用キャリアになったとしても、現在は5G自体が強みになる訳ではなく、他キャリアとの差別化は厳しい。将来的に4Gサービスが終了する前にいち早く5Gへ完全シフトするには、楽天モバイルが他キャリアよりも良いポジションにいるといえる。

 一方、NTTドコモはLTE周波数のNR化が後れ気味で、現在、ソフトバンクとKDDI(au)に後れを取っている。楽天モバイルのLTE周波数のNR化導入に伴い、NTTドコモとしても、5G人口カバー率の最も低いキャリアになることは避けたいはずで、今後は5G専用の展開とともに、LTE周波数のNR化も期待したい。

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