石野純也の「スマホとお金」
「au Starlink Direct専用プラン」の料金をどう見る? 非auユーザー向けの活用術をご紹介
2025年5月22日 00:00
4月にauユーザー専用のサービスとしてスタートした「au Starlink Direct」ですが、KDDIはその評判を受け、約1カ月で他社や自社のサブブランドユーザーへの開放を行いました。これを利用するために必要なのが、「au Starlink Direct専用プラン」です。SIMカードやeSIMの形で提供され、デュアルSIM端末で2回線目にすることが想定されています。
一方で、メインブランドの料金プランとして提供されていることからも分かるように、料金は決して安くはありません。使うか使わないかが明確ではない“備え”のために契約しておくには、少々躊躇してしまう金額かもしれません。では、このプランはどのように捉えておけばいいでしょうか。
ここでは、au Starlink Directに興味のある非auユーザー向けの活用方法を提案していきます。
サブ回線として提供されるau Starlink Direct専用プラン、料金は月1650円
au Starlink Direct専用プランは、au以外のユーザーがau Starlink Directを利用できるようにするための料金プラン。プランとは言え、非auユーザーに提供するのが主目的なため、これに加入するためのSIMカードやeSIMのプロファイルを発行する必要があります。料金は税込みで月額1650円。
新規契約とイコールになるため、事務手数料も3850円かかります。
ただし、後者の事務手数料に関しては、au PAYを利用すれば同額の3850円分還元を受けることが可能。一時的に支払いは発生するものの、実質的に事務手数料は無料になるというわけです。
余談にはなりますが、auじぶん銀行でオートチャージを使って、自動払い戻しを設定しておけば、銀行口座に3850円ぶん無料で振り込めるため、クレジットカードの支払いに間に合えば手数料分を相殺でき、真の意味で無料になります。
月額料金は1650円。現状では割引などはなく、素の料金だけの非常にシンプルな課金体系のため、特に解説も必要ないでしょう。
ただし、6月に開始されるUQ mobileの新料金プランには割引があります。その額は1100円。UQ mobileユーザーであれば、550円まで料金が下がります。対象になるのは「トクトクプラン2」と「コミコミプランバリュー」の2つ。
新料金プランに移行すればau Starlink Directを安く使えるという特典にもなっているというわけです。
一方で、UQ mobileも、現行の料金プランの場合には、そのまま1650円がかかります。コミコミプランバリューの場合、現行のコミコミプランから料金が550円上がり、代わりにデータ容量の5GB増量とPontaパスがセットになってきます。
コミコミプランの契約者がコミコミプランバリューに移行し、さらにau Starlink Direct専用プランもつけると、1100円の料金アップになります。
サービスがセットになるため一概には言えませんが、単純にUQ mobileなら550円で使えるというわけではない点には注意が必要です。また、同じKDDIでもpovo 2.0はフルの料金がかかります。
もともとの料金が安いため、仕方がないところではありますが、トッピングなどの形で購入できるような検討もしてほしいところです。また、当然ながらドコモやソフトバンク、MVNOのユーザーは1650円がフルにかかります。
通常の通信も1GBまで利用可能、データ容量不足も補える
率直に言えば、もしもの時の備えに毎月1650円払うのは高いと感じています。1650円あれば、サブブランドで割引を受ければ4GB程度のプランを契約できるからです。MVNOであれば、日本通信の「合理的みんなのプラン」が1390円で20GB利用可能。
その意味では、登山やキャンプが趣味だったり、仕事で海上に出ることが多かったりと、頻繁にモバイル通信が圏外になるエリアに行く非auユーザー向けの料金プランと言えます。
また、UQ mobileであれば比較的割安なため、契約しておきたいユーザーは増えるかもしれません。
一方で、他社ユーザーもau Starlink Direct専用プランを日常的に利用することで、ある程度まで“元を取る”ことはできます。au Starlink Direct専用プランは、その名称とは裏腹に、通常のデータ容量も1GBつくからです。
名前から、au Starlink Directしか使えないように思う人もいるかもしれませんが、実態はauのデータ通信専用1GBプランに近い仕様。1GBプランとはいえau回線として運用できるので、au Starlink Directが使えるという理屈です。
メインブランドの回線を1GB、1650円で使えると考えれば、許容範囲になる人も多少は増えるのではないでしょうか。このプラン以外でauを小容量で契約しようとした際に選択肢に挙がる「スマホミニプラン+」は、1GBまでの料金が各種割引適用後で2178円。
しかも、この料金で使うには、「auスマートバリュー」や「家族割プラス」「au PAYカードお支払い割」が適用されていなければなりません。
割引適用前の素の料金は、1GBまでが4708円。しかも、8月1日以降の値上げ対象になっており、料金は220円上がる予定です。au Starlink Directまで含まれたメインブランドのauを、気軽に試してみるには少々高すぎます。
これに対し、au Starlink Direct専用プランであれば、1人で契約してもOK。auのほかのサービスがなくても、この料金で1GBまで利用できます。
その意味では、au回線をお試し的に使ってみつつ、メイン回線で足りなくなったデータ容量を補完するという使い方をするには、悪くない料金プラン。
かつて、iPadに組み込まれていた「Apple SIM」などに提供されていた「LTEデータプリペイド」が、1GB、1650円だったことを踏まえると、まあまあ妥当な金額には見えます。
他社のユーザーがOpensignalの調査で世界一に輝いたauのネットワークを試してみるには、いいチャンスと言えるでしょう(ただし、後述のように5GはNSA、SA問わず利用できません)。
6月まではお試し無料キャンペーンも、料金的にはSMS無料も要注目
au回線のお試し利用という観点では、6月30日まで実施されている6カ月間の無料キャンペーンも見逃せません。とりあえずあずauを使ってみて、そのネットワーク品質を体感してから乗り換えの判断をするには十分な期間と言えます。
本来の用途であるau Starlink Directからは少々離れてはしまいますが、1GBをこの金額に設定したのには、こうした思惑もありそうです。
もう1つ料金的に大きいのは、SMSの送信料が無料というところ。通常であれば、1通、全角70文字まで3.3円かかりますが、au Starlink Direct専用プランは1650円の中に含まれています。
新規契約しかできないため、普段使っている電話番号は利用できませんが、あらかじめ電話番号を伝えた友人や家族などにSMSを送る際にはお得。SMSが使えるため、各種サービスの認証用電話番号としても活用できます。
特に、UQ mobileの新料金プランユーザーの場合、au Starlink Direct専用プランの料金が550円に下がるため、この恩恵が大きくなります。SMSが定額になるのは、現状だと楽天モバイルのRakuten Linkぐらい。そのRakuten Linkも、iOSだとSMSが送信できないという制約があります。
SMSのためだけに550円払うのは少々高い気がしますが、1GBとSMSと考えると、データ容量を単純に追加するよりお得感があります。
お試し的に使う際に注意したいのが、この料金プランが料金プラン変更に対応していないこと。データ通信専用になるため、MNPを使った転入や転出にも非対応。使ってみて通信品質の高さに気づいたとしても、そのままメイン回線にはできません。
auを気に入ったら改めてメイン回線をMNPしたあと、解約しなければならないのが難点です(ただし、解約せずに使い続けた場合、au回線のユーザーでも割引は受けられます)。
また、5Gが利用できないため、通常のau回線とは速度に違いもあります。通常の通信では真の回線品質は分からないというわけです。
auの通信を活用しつつ、au Starlink Directも使えるという点では、メイン回線をUQ mobileに移し、au Starlink Direct専用プランはそのまま使い続けるのがよさそうです。
もっとも、電話番号をあまり気にしない人なら、そのまま料金プランを変更できた方がいいはず。その方が、手続きも簡単です。せっかくお試し的な使い方を提案するのであれば、もう少しユーザー獲得に色気を出してもいいような気がしました。