石野純也の「スマホとお金」

UQの新料金プランを徹底解説! 「既存プラン維持」より新プランやpovoも検討すべき理由

 KDDIは、6月3日にメインブランドのauとサブブランドのUQ mobileに、新料金プランを導入します。合わせて、既存の料金プランを改定し、最大で300円程度の値上げを実施。同時に特典をつけ、料金プランの中身をブラッシュアップしています。

 特にauには、Pontaパスがセットになった「auバリューリンクプラン」が新設されるほか、「使い放題MAX」もリニューアルして、特典が追加されます。

KDDIはauとUQ mobileに新料金プランを導入する。既存プランも料金を改定し、値上げする予定だ

 通信の優先度が上がる「au 5G Fast Lane」のほか、サードパーティのサービス料に対して20%のポイント還元が受けられる「サブスクぷらすポイント」に加え、国際ローミングも15日分無料になります。

 一方で、これまで小中容量の主力だったUQ mobileも、大きく料金体系が変わります。

 特に小容量のユーザーは、ブランド変更も視野に入れた方がよくなるケースも。そこで今回は、KDDIの主力になっているUQ mobileの新料金プランを解説、分析していきます。

容量+サービス追加で値上げのコミコミプランバリュー

 現在、UQ mobileは3つの料金プランから選択できる形になっています。

 主力になっているのが、NTTドコモの「ahamo」に対抗し、シンプルな「コミコミプラン+」。データ容量は計33GBで、10分間の音声通話定額もついて、料金は3278円です。割引などは一切なく、基本的に1回線から、この金額で利用が可能。家族契約や固定回線とのセット契約も必要ありません。

コミコミプラン+は、ahamoの容量増加に対抗するために改定された料金プラン。前身となるコミコミプランは23年6月に導入されていた

 やや特殊な位置づけのコミコミプランに対し、ほか2つのプランはベーシックな容量別の料金体系。 ミニミニプランは月4GBで2365円、トクトクプランはデータ利用量が1GB以下の月は2277円、1GB超15GB以下の月は3465円 になります。ここに「自宅セット割」と「au PAYカードお支払い割」の2つが適用されると、ミニミニプランが1078円、トクトクプランが2178円まで料金が下がります。

ミニミニプランは、データ容量が4GBの料金プラン。割引適用で1078円まで料金が下がる

 前者は、固定回線かauでんきの“どちらか”で1100円の割引が受けられるサービス。後者はau PAYカードで料金を支払った際に受けられる割引です。

 固定回線と比べると、条件が緩めな電気サービスで1100円の割引を受けられるのは、大きなメリット。これらの割引が適用されると、料金水準はMVNOに近くなります。安価にKDDIの回線を使いたい人には、いい料金プランと言えるでしょう。

 ただし、この料金プランに 加入できるのは6月2日まで 。6月3日からは、3つの料金プランが2つに集約され、その役割が変わります。まず、4GBのミニミニプランは廃止になります。トクトクプランは料金が上がる階段の容量を変更して、「トクトクプラン2」にリニューアル。さらに、コミコミプランもサービスをセットにした「コミコミプランバリュー」になります。

左がコミコミプランバリュー。データ容量はコミコミプラン+の特典を加味すると2GB増量される形になる。Pontaパスやサブスクぷらすポイントも付与される一方で、料金は3828円にアップする

 コミコミプランバリューの料金は3828円。現行のコミコミプラン+と比べると、 550円の値上げ になります。ただし、データ容量は33GBから35GBに2GB増量。これに加えて、月額548円の「Pontaパス」と、Netflix、Apple Music、YouTube Premium、TELASAに加入した際の料金の20%ぶんがPontaポイントで還元される「サブスクぷらすポイント」に対応します。2GB増量と2つのサービスがつくことで、値上げを図った格好です。

 例えば、Netflixの「広告つきスタンダード」とYouTube Premiumに入っている場合、月額料金は1970円。ポイントは税抜き価格につき、小数点以下は切り上げになるため、 2つで得られるポイントは359ポイント になります。値上げぶんは吸収しきれていませんが、Pontaパスでクーポンなどを使えることを考えれば、そこそこ納得感はあります。

サブスクぷらすポイントに対応する。これらのサービスを毎月利用していた人であれば、値上げを抑えられる
コミコミプランバリューには、Pontaパスも付与される。クーポンなどの特典を上手に活用すれば、元は取れそうだ

 一方で、シンプルに 通信だけを使いたい人にとっては値上げになる点には注意が必要 。より安価にKDDIの回線でデータ通信をしたい人は、povo2.0の利用を検討した方がいいかもしれません。こうした損得の計算が必要になった点では、これまでのコミコミプランよりもやや複雑になった印象もあります。割引なしのシンプルなセット料金だったコミコミプランから、その位置づけを変え、経済圏重視になっていることがうかがえます。

ミニミニプランとトクトクプランは1つに統合、料金は550円アップに

 もう1つの トクトクプラン2は、現行のミニミニプランとトクトクプランを1つにまとめたような内容 。データ利用量の1段階目が5GB以下に上がり、5GBを超えた際の容量もトクトクプランの15GBから30GBへと倍増しました。これまでのトクトクプランは、使う月とそうでない月の変動をカバーする料金体系でしたが、トクトクプラン2は1つでより幅広い利用形態をカバーする料金プランと言えそうです。

トクトクプランは、最大15GBの中容量プラン。1GB以下の月は料金が下がる2段階制を採用していた

  トクトクプラン2の利用料は月額4048円。5GB以下の場合、1100円料金が下がり、2948円に なります。また、これまでのミニミニプランやトクトクプランと同様、自宅セット割で1100円、au PAYカードお支払い割で220円の割引があり、すべて適用した場合、5GB以下が1628円、5GB超30GBが2728円になります。また、割引では、自宅セット割と家族セット割が選択制になります。家族セット割の場合、割引額は550円に下がるため、 できるだけ固定回線かauでんきを契約することをお勧め します。

 現行のトクトクプランとの比較だと、下限の料金で使える容量が5GBと5倍に増えた代わりに、料金は割引適用後で638円の値上げになっています。

 また、データ利用料が5GBを超えた際には、データ容量が15GBから30GBに倍増した一方で、料金は550円上がっています。ただし、こちらも「サブスクぷらすポイント」に対応しているため、先に挙げたようにサードパーティのサービス加入である程度“元”を取ることはできます。

トクトクプランとトクトクプラン2の比較。1GB超5GBまでは新プランの方が安い一方で、5GB超15GBまでは現行のトクトクプランの方がお得になる。15GBを超えると、現行のトクトクプランはデータ増量オプションIIで、トクトクプラン2と横並びになるが、20GB超は追加のデータチャージが必要になるため、青天井で料金が上がっていく

 比較の上で 少々厄介なのが、ミニミニプランがなくなり、トクトクプラン2の5GB以下に吸収されていること です。

 ミニミニプランは2つの割引を受けると月1078円になっていましたが、トクトクプラン2は5GB以下で1628円。こちらも、データ容量が1GB増えた代わりに、550円の値上げになっています。ミニミニプランは繰り越しもあったため、毎月のデータ容量が4GB+αに収まっていた人には、なかなか選びづらい料金体系になっています。

こちらはミニミニプランとトクトクプラン2の比較。4GBまではミニミニプランの方が安く、データ増量オプションIIをつけると5GBまでトクトクプラン2と同額になるが、5GB超6GBまでは再びミニミニプランの方が安くなる。ただし、7GBを超えるとデータ容量のチャージが必要になり、トクトクプラン2を料金で上回る

 UQ mobileの新料金プランは、料金プランの数を減らし、サービスをバンドルしたうえで値上げした格好で、抜本的な料金改定に見えます。

 この狙いを、KDDIの取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長 竹澤浩氏は、「au、UQ、povoのマルチブランド戦略を取っているが、各ブランドの価値をどう整理するかを改めて考えた」と語っています。竹澤氏は、「通信の基本的な形と、選択できる付加価値をいかにご提供したらいいのか考えた」と述べており、UQ mobileの役割が変化していることがうかがえます。

au、UQ mobile、「povo2.0」の位置づけを見直したとする竹澤常務

現状維持だと損? 既存プランの値上げでプラン変更や「povo2.0」も視野に

 こうした料金体系を採用できた背景には、「povo2.0」の存在があることも大きいと思えます。先に挙げたように、シンプルに30GB前後のデータ通信を安く使いたければ、「povo2.0」を選択するという手があるからです。こちらは、30GB/30日間のトッピングが2780円です。また、ミニミニプランに近い料金がよければ、「povo2.0」には3GB/30日間で990円というトッピングも存在します。

 元々、コミコミプランはahamo対抗をうたっていた一方で、店舗が使えるなど、これまでのサブブランドの形を引きずっていました。ahamoは、オンラインに特化することでコストを抑えていたのに対し、UQ mobileは単に値下げをしていただけだったというわけです。その意味では、オンライン専用プランをより安く、店舗が使えるサブブランドは付加価値をつける方向に舵を切り、ブランドごとの住み分けを図ったと言えます。高いと思ったら、povoに移ればいいというわけです。

よりシンプルな中低容量プランは、「povo2.0」で選択可能。こうした住み分けを図った格好だ

 この受け皿がある点は、irumoを廃止し、「ドコモmini」でデータ容量の選択肢を2つに絞った ドコモとの大きな違い と言えます。ドコモの場合、単純に低容量の料金プランが割高になってしまっただけのように見えますが、KDDIの場合には、「povo2.0」へ誘導することで離脱を抑止できるというわけです。ユーザーとしても、このような選択肢があることは覚えておいた方がいいでしょう。

 なお、6月2日で現行の料金プランは申し込めなくなりますが、 駆け込み契約すべきかどうかは悩ましい ところです。KDDIは新料金プランの導入と同時に、既存の料金プランの値上げも表明しているからです。

 auブランドでは、使い放題MAX+に国際ローミングの15日ぶん無料やau 5G Fast Lane、サブスクぷらすポイントがつき、330円の値上げになることが表明されています。サービス追加や値上げは、既存の契約者も対象です。

auに関しては、既存の料金プランの値上げも発表されている。ただし、使い放題MAX+などは特典も充実する

 実はUQ mobileの現行料金プランも、auと同様、値上げすること自体は発表されています。ただし、ミニミニプラン、トクトクプラン、コミコミプラン+がそれぞれいくらになるかは、追って発表される予定。auの料金プランでは、110円から330円の値上げが実施されますが、これをUQ mobileに当てはめると、ミニミニプランは1188円から1408円の範囲になることが予想されます。

 最大値の場合、トクトクプラン2との金額差は212円に。これで1GB増えて、ブスクぷらすポイントが使えるのであれば、無理してでもミニミニプランを維持し続ける必要性は薄くなります。

 コミコミプラン+も同様で、330円値上げされると3608円になります。

 これなら、 特典重視でコミコミプランバリューにするか、安さを取って「povo2.0」に移るかを検討した方がいい でしょう。新料金プランと同時に値上げも断行されるため、既存のユーザーは現状維持より、今のうちにどう動くのかをシミュレーションしておいた方がよさそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya